恋×シンアイ彼女 レビュー

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恋×シンアイ彼女 初回版

恋×シンアイ彼女 初回版

総評

「シンアイ」ってなんなんだろうか?
「しんあい」と言う言葉だけれども、ヒロインに課せられた「しんあい」は様々な意味を持っていると思われます。
姫野星奏は「シンアイ」
新堂彩音は「深愛」-心から深く愛すること。
小鞠ゆいは「親愛」-人に親しみと愛情をもっていること。
四條凛香は「信愛」-信用してたいせつにすること。
新堂彩音はただただひたすらに國見洸太郎を愛していた。それが自分の人生の分岐点から外れても國見洸太郎と一緒の時間を過ごしたかった。「深愛
小鞠ゆいは母親が作った花壇をひたすら親しみと愛情を持っていた。それが例え、学校の生徒じゃなかったとしても。「親愛」
新堂彩音もただ旧校舎を守りたかった。居心地の良いあの場所を守りたかった。「信愛」
何故、姫野星奏に関して「シンアイ」なのかと言うと本人の人生の全ては音楽だからです。
幼少期の少しだけ主人公との思い出もあるでしょうが、彼女が抱いている「シンアイ」は「信愛」でも「深愛」でも「信愛」でも無いからだと思います。
多感な思春期を過ごす少年時代の思い出と少年期を過ごし、ある程度精神的に大人となった主人公の話は胸を劈く様に面白かったです。
ただ、全部「姫野星奏」と言うアーティストはアーティストを貫き通し、それが自分の人生の犠牲となっても「グロリアスデイズ」というバンドと「グロリアスデイズ」と言う曲、幼いころに出会った少年との思い出の曲が全てだったのだと思います、例えそれが辛い別離となったとしても。
主人公もクリエーターの端くれですので、結局、音楽に全てを捧げる覚悟が有る姫野星奏と結ばれることはできなかったでしょう。
それを理解しつつも、最後の最後まで姫野星奏を待つ必要はあったんだろうか…と思う点はあります。
辛かったならば、洸太郎に話せば良いし、何故「彼氏」を信頼できなかったのかなぁと思う部分が大きいのです。故に「シンアイ」と言う部分もあります。
深くも親のようにも信じるでもない「シンアイ」
如月先輩の言うとおり、家族を持ち、普通の主婦として過ごしているかもしれない彼女にとって意味はあるのかと。自分もそう思います。
賛否は絶対あるでしょうが音楽に囚われ続けてる星奏を見ているよりも歳を重ねて、クリエーターとしてなんとか借金を返済し、幾つかの出会いを抱え、普通の主婦として生きた「姫野星奏」もあっただろうな…と。(完全なNTRなんですけど)
後、主人公がラストエピソードでどうしても星奏に引っ張られ過ぎてるところはあると思いました。
二度の失踪(別離ではないな)に加え、ホテル無きゃ元カレの家泊まるわー的なスタイルの星奏は好きではなかったし、何故、グロリアスデイズが大変なのか、どうしてこの町に来たのか、全く星奏の思いを描写されているわけではないのです。
アナザービューとかで星奏の思いが少しでも分かれば良かったのですが、ただただ彼女の思いは一方的で支配的で独善的なのです。(國見洸太郎と言う人物の人生を弄んだと言う意味で)
ただ「なんだかごめんね」とか「ごめんね」という簡単な言葉で済まされていた気がするのです。
星奏が嫌いなわけではないけれどあまりにも彼女の思いが分からなすぎるところは大きかったなぁ。
星奏は0か1か論でしか考えれない女の子なのかなぁ、とも思います。
恋か、音楽か。
彼女のようなタイプには妥協点って存在しないと思うので、やっぱり結局、主人公と結ばれるルートが考えられないですね。
幼心の整理が最後の最後まで出来ていなかったかなぁと思う点、個別ルートでの無駄シリアス(星奏じゃなくて新堂とかゆいとか)もいらなかったのではないかなぁと。
間違いなく迷作です。
ただ、これを「こっ恥ずかしくなるような恋を追い続ける物語」として発売するのは些か問題なんじゃないのかなぁ…とは思いました。
前もって事前知識があったから許せるけれども、情報もなくただもっと甘っとろとろの話を期待していたゲーマーから批判を受けてもしょうがない部分は存在するなぁ。

シナリオ雑感

個人的に、「単なるイチャラブ」を求めるゲームとしては違うんじゃないかな、と思う部分は多々有りました。
例えば四條先輩は必ず生徒会選挙で負けてしまうし、生徒会選挙で負けた結果ゆいの母親の作った花壇を守ることは出来ません。
正直にこのゲームで「ハッピー」な部分って無いんですよね、ヒロインたちが望むものは手に入らないし(まぁ一応新堂に関しては過去の思いを結ぶことが出来て望むものを手に入れた、と言っても過言では無いですが)主人公も望むものを手に入れることはできません。
また、比較的イチャラブしてた新堂ルートでも元服飾クラスだったのに彼氏を追っかけてデザインを捨てた、などとモブキャラから暴言を吐かれたりもしますし、確実にあー…典型的なやっちゃいけないシナリオやってるなぁ、って感じはしました。
また、複数ライターの結果なのか、四條先輩とゆい(嫌いじゃないが)はどちらかと言うと学園側寄りの話で、新島氏が書いたと思われる彩音と星奏に関しては恋愛の比重が大きいのですよね。
どちらを求めるか、というとやはり過去のいざこざを抱えた新堂と星奏になっちゃうかなーって感じは…。
それでもゆいのシナリオは良く出来ていたと思います、ただどちらにしろ単調でキツイ部分は多いです。四條先輩は個人的にプレイしてて辛かったかな…。
ラストエピソードだと旧校舎と花壇はちゃんと存在していたので四條先輩とゆいのルートが……って部分もありますね…。

キャラクター雑感

四條凛香

生徒会選挙で敗北し、今まで持っていたアイデンティティが崩壊、主人公と付き合いながら自分にとっての人生を探し始める…ようなシナリオ。
正直、生徒会選挙で敗北した後の先輩は見てられなかったし、それから自分のやりたいことをひたすら探す先輩は魅力的ではありましたけれども、なんか消化不良。
せっかくプレゼントした髪留めを壊して直すあたりとかちょっと理解が出来ない部分は多かったです。
「さよなら旧校舎パーティー」でやっと先輩の自我を取り戻せたかな?と感じたり。
Hシーンは多いもののあまりにも記憶に残らないシナリオかなぁ。
美しいCGは多かったんだけどね。

小鞠ゆい

先輩が結構しんどいシナリオだったのでしんどいのかなぁと思いつつプレイしたら案外胸に来る(涙を唆る)シナリオ。
シナリオ雑感でも書きましたが、ゆいの母親の花壇を守るために会長は動きます、動きますが、やはり四條先輩ルートと同じく、敗北してしまうため守ることは出来ません。
そして考えだしたのが嘆願書を出すこと。
嘆願書を出すことでifとして叶うのではないかとゆいと文芸部、先輩は動きます。
動きますが、花壇の世話をシているとは言え、やはりゆいはまだ学園生ではないし、部外者であるということで結局、花壇を取り壊すことになります。
ゆいは「皆が動いてくれた結果がこれであるからしてしょうがない」と健気なことを言ってくれるのですが。
花壇を取り壊すまで一生懸命世話しようね、とのゆい。その姿を残そうと主人公は動く。
花壇を取り壊している最中、やはり理にかなっているとは言えゆいの心は折れっぱなし。
取り壊しが終わる最中ゆいはタイムカプセルが埋まっていることに気づきます。
そして母からのタイムカプセルのメッセージを読み、主人公はゆいを主人公とした小説を書き、渡す。
一年後、御影ヶ丘学園の園芸部になったゆいは花壇の花たちの植え替えをしていて「お花は枯れてもまた咲くんですよ」と。
先輩を好きな気持も変わらない、とEND。
個人的にゆいシナリオは花壇の取り壊しのシーンが非常に涙を唆るのでその後のタイムカプセルや花の植え替えが出来ているというのは残念。
「お花は枯れてもまた咲くんですよ」というゆいは可愛かったし前向きに生きていかなきゃいけない(四條先輩と同じ)という意味合いではシナリオとして成り立っている気もするところはありますがご都合主義だなぁと思う部分は強く感じてしまったシナリオかなぁ。

新堂彩音

はじめからフラグ立ちまくりの不器用ツンデレ少女新堂。
もーめっちゃ可愛かったです。可愛い。
序盤は中学時代のアルバムをふと開くと「好きでした、答えをください」とのラブレターが挟まっていたことに気づく主人公。
星奏と新堂に改めてラブレターを出すのですが、アホの主人公は二人間違ったラブレターを渡してしまう。
呆れる新堂と星奏ですが、まぁ文芸部の手伝いとしてラブレターを作成するお手伝いをしよう!
不器用な三角関係が始まりますが、それでも新堂の思いは変わらず。
中学時代、合唱コンクールで疎まれた新堂の心を癒やしてくれるのはずっと主人公で変わらなかった。
体が弱く大きな声も出ない主人公のことにどうしても惹かれてしまうツンデレ不器用が誕生し、主人公も星奏に自分の今の思いを伝える。
そしてなんやらかんやらで新堂と結ばれることに。
ここからはとんでもなく甘い、コレを望んでいたのだよ!と思うぐらいの甘々シナリオが展開。(少なくともコスプレ云々までは)
お風呂でイチャイチャ、ラブホでイチャイチャ、まぁイチャイチャするわけです、それで良いんだそれで
と思っていたらコスプレイヤー志乃からコスプレ衣装を作ってくれと頼まれ、同意する新堂。しかし今度は元々の服飾科の生徒から志乃のコスプレ衣装の出来が駄目だったとかいろいろ文句を言われはじめる。(ココからが苦痛だった)
サマフェスにグロリアスデイズを呼ぶから衣装を作ってくれと今度は学園側から頼まれる新堂。
普通科から新堂、服飾科から文句を言ってきた浦河他としょうがないのでサマフェス用に衣装用意。
まぁそれでなんとかグロリアスデイズの衣装を作ることは完成。
そして新堂は主人公に何故自分がデザインから普通科を選んだか、を告白。

「私、洸太郎に会いたかった」
「いかないと、どうしようもなかった」
「私、重いんだ」
「あの頃と同じ距離にいきたかった」
浦河さんの言う通り、気持ち悪いの」
「でも。それだけ私にとっては大事なことだったんだ」
「頭でわかってても。洸太郎の近くにもう一度、行きたかったんだよ」

と。
最後は水着コンテストをやって、グロリアスデイズが来ると思ったら食中毒でグロリアスデイズメンバーは来ず、新堂が歌うEND
初恋の重さと、新堂から洸太郎への「深愛」が伝わったシナリオかと。
彼女の思いは間違いなく「深愛」だけれども國見洸太郎は星奏の存在があった。
そう考えると痛くて甘いのは新堂なのかなーと思いながら。

姫野 星奏

姫野星奏攻略時には当然ですが三角関係であった新堂彩音との恋愛的な結論を出さなければなりません。
ほぼ流れは新堂ルートと同じなわけですが、まぁ悲しいけど新堂はここで脱落。
なんとか5年越しの思いを伝え、姫野さんと結ばれることが出来ます。
そこからの星奏とのイチャラブっぷりは脳天溶ける感じでした。CV.阿部朔(安玖深音)って事もあって、もうとろとろ。
小学校時代の甘い思い出からデートや部活の日々。
こっ恥ずかしい「青春」はしてると思いました、新堂と同じ。
しかし、そんな日々も続くわけでもなく、賛否両論巻き起こるグロリアスデイズと言う名の嵐が。

姫野星奏。
君と再開して停滞していた俺の学園生活は目まぐるしく走り始めた。
そうして、急ぎ足で去っていくのか。
星奏はきっとこの町を去る。
確信のように俺は思っていた。
それもいいだろう。離れていても俺は星奏を応援するし、時に連絡を取ればいい。
だけどなんとなく、星奏はこのままもっと遠い場所へ行ってしまう気がした。
俺の言葉も届かない、どこかに
杞憂ならいい。
それを願おう。
だって、それじゃぁ、星奏。
あの時も、今も、君は……俺を振るってことになるじゃないか

当然その後、星奏は謝罪もせず、どういう理由なのかも告げず、フェードアウト。説明は一切なし。
やり場の無い思いにかられながら文芸部にいると新堂が現れる。
洸太郎はそして決めるのだった、「さよならアルファコロン」の続きを書こうと。
個人的に思ったのは星奏側の「思い」がまるで無いこと。
「理由」は存在していても星奏の「思い」がそこには存在しない。彼女側の思考が無いが故に洸太郎がただのピエロに為っている。
酷い言い方かもしれないけれど、これはただの悲恋…というか勝手都合に振り回され、5年間ずっとたった一人の女の子を追いかける滑稽なピエロにしか見えないし、ピエロを嘲笑っている姫にしか見えない。
それでも綺麗に見えてしまうのは洸太郎が最後の最後で「さよならアルファコロン」の続編を書こうと立ち上がったところだろうか。
情けないピエロだけれど、それでも彼女のために何かを届けたいと言う思いで立ち上がった滑稽なピエロだけれど、最終的にどう落ち着くのかな、と言う印象だった。

姫野星奏 Last Episode

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星奏と二度目の別れをし、学園の先生となり夜の街をぶらついていた際に出会った森野精華と文芸部をやっている洸太郎。
多感な思春期と別離により少し冷めた、現実的な人間に為っていた。
「さよならアルファコロン」の続編「それからアルファコロン」
はじめの「さよならアルファコロン」は精華が実写化し、映研が「それからアルファコロン」を実写化しようと話を持ちかけてきた。
精華は断るも、すべての話をオープンにし、映画を撮る事に為った精華。
するとその夜、因縁の星奏と出会う。

「作曲は?」
「今は休業中」
「そうなんだ」
「うん」
「あー…」
何かを思い出したように星奏が天を仰いだ。
「どうしたの」
「あのね、今ホテルに滞在してるんだけど、チェックアウトしたんだ」
「今夜は予約してないの」
「今晩のお宿を探している時に君に出会ったんだよ」
(中略)
「そうだ、洸太郎くんのところに泊まらせてもらおう。いい考えだ。」
「なんのつもりだ」
「なんのって…」
(中略)
「ごめんね、じゃぁね」

その後、星奏を結局泊めてしまう洸太郎。
そして、映像研究部が森野精華主演の「アルファコロン」を撮る事になる。
その最中精華は自分が東京に行ってちゃんと芝居の勉強をしなくてはならない事、その事が怖いこと等を告げる。
初めて出会った夜も自分が自分で居たかったという理由でフラフラしていて運命的な出会いに為ったと。本当に先生が好きだと。
それでも、どうしても叶わない精華の思い。
精華に対して洸太郎は小説という名のラブレターを渡す。
演劇を選んだならば、俺は振られたんだよ、と言う言葉とともに。
すれ違う様にまた星奏と出会う。
グロリアスデイズは解散し、スランプに陥り、思い出に縋るため星奏はこの町に再び帰ってきたという。
そして今でも洸太郎に対し思いを抱えているということ、故にずっと一緒にいる、という二人の生活がはじまった。
しかし、そんな日々も続かずプロポーズするも星奏は何も言わずまた洸太郎の元を去った。「二度と会いません」との手紙とともに。
そこからの洸太郎の日々は目まぐるしいものだった。
精華との一時間のデートも学校側からバレてしまい、ストレスを抱えて退職することになり、そこから如月先輩のつてを繋がってノンフィクションライターをやることに。
当初の目的だったグループバンド「グロリアスデイズ」の真相を知っていった洸太郎。
大人たちの汚い搾取でかけがえのない時間を奪われるメンバー。そして幼い星奏はメンバーから音楽を要求され輝かしい時間と思い出を音楽に費やしたと。
しかし、その記事でライターを首にされ、また作家としての活動を始める洸太郎。
三作目は「お前はアルファコロン」
そしてそれを書き上げた春の穏やかな昼間。夢を見る主人公。
今でも星奏が好きだ、と。ずっと待っている、と。
そして夢現に現れる星奏。
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それは現なのか幻なのか。
どちらでも良い、春の儚い夢なのだから。

システム・ボイス

車の人も、阿部朔さんも遙そら様もベストマッチ。
というか遥そらさんは受けっぽいキャラやると最高だなぁと思うわけですよ。
不器用ツンデレばんじゃい。
後、隠れキャラの森野精華(鶴屋春人)もバンジャイ。

Hシーン・CG

CGには☆5です。きみしま青さん, しらたまさん, 倉澤もこさん, ぺろ(Pero)さんと複数原画なのに淡い塗りであまり違和感を感じずプレー出来ました。
問題はHシーンがものすごい淡白な所ですね。
愛撫もあんまりしないし挿入してアンアン喘いでるイメージが非常に強いです。
新海誠チックと言うんでしょうか。淡い感じ。

Music

水月稜さんの音楽は最高でした。
後、Ducaさんの「記憶×ハジマリ」
EDの「東の空から始まる世界」
個人的に「GLORIOUS DAYS」は…あんまり好きではないです…。
本編中のイメージが悪すぎるせいかなぁ。