総評
非常にうまいシナリオの作りだと思いました、評価が高いのも納得です
NTRと言う側面は有るものの、「明日、私は誰かのカノジョ」なんかを思い出すシナリオです
ただあんまりNTRと言う感じは無かったかな、高橋とのシーンはNTRっぽい感じが多かったのですがそもそも秋乃が風俗嬢となり、もう普通の学生や憲秋たちの世界に戻れないと確信するあたりから憲秋への気持ちが「なくなってしまった」のでは無いかな
秋乃が思い詰める前までに社会のセーフティネットがなんとか入ってあげて欲しかったなと言う気持ちと、
追い詰めた先の風俗店の店長やボーイのアキラくんが非常に彼女の心の緩衝材になってるんですよね
卑しい仕事だと思っていても秋乃に対して優しくしてくれる店長やアキラくんに対しては悲しくなってしまうくらい言い難い気持ちを感じてしまった、
それこそ「好きだ」とか「愛してる」なんて言葉をぶつけてくる憲秋よりよっぽど行動で示してくれる…ような気がしました
それこそずっと秋乃は「いい子」で「聞き分けの良い賢い子」を演じ続けていたからこうなっちゃったのかもしれません
生死に関わるようなバイオレンスなシーンはありません、
ただただ人間の無力さと19歳から20歳(当時の成人年齢)になる女の子のやるせないお話
シナリオ
初恋の彼女が風俗嬢として見つけてしまった憲秋
卑しい仕事だと思っていても体を売って生きていくために奔走する秋乃
二人の気持ちの行く末はどうなるのか、切ないビターでBAD ENDしかないやるせないお話
憲秋編
はじめて恋した彼女が風俗嬢として見受けられてしまった
それでも学生時代の気持ちやそんな状態の彼女から恋心を切り離すことが出来ず、風俗浸りになってしまう主人公の憲秋
片目に見ると「初恋の彼女」と結ばれることが出来た憲秋だったが、そんな幸せは長く続くことはなく現実が襲いかかってくるのが憲秋編
風俗と言う店と彼女、雪宮秋乃との「その場での恋」を重ねる日々で浮かれていく憲秋の描写はとてもうまく出来ていた
傍目から見ても絶対こんな歪な恋や歪な気持ちの押しつけはいい意味で結ばれるはずもないなと予想はしていたものの、
「自分の知らない男から行為を教えられ堕ちていっている」姿に気づかない盲目っぷりが非常によく描写されている
周囲の友人から止める声が合っても聞こえないのだ、なにせ「初めての恋をした相手で体を重ねた相手」ならば舞い上がらない男は居ないだろうなと
最後の最後で堕ちきった彼女を見て憲秋編が終わるわけだけどもとてもうまい引きだった
秋乃編
秋乃がどうして風俗に堕ちたのか、それが語られます
国公立大学に入学したは良いものの、母親が倒れ父親が蒸発してるの秋乃は金の伝手が無くなり、入学金等抱えた借金によって人生が狂わされてくると言うなかなかリアルな話です
「たかが千円ぐらい」というのが秋乃の気持ちをずんと表しているなと思いました、
風俗店に入るまではその「たかが千円」が支払えず風呂に入ることも出来なかった
それなのに風俗の入店レクチャーだけでそれ以上のお金を得ることができる
当に秋乃に電撃走ると言ったところでしょう、金銭感覚をおかしくされる種を蒔かれているわけですからね
卑しい仕事と言う反面、優しくしてくれる「アネモネ」の店長やアキラくん
もちろん、やばい同僚はいるものの本当に優しいんですよね…それこそ何も秋乃のことを知らないのに色々言ってくるバイトのおばさんたちよりも
憲秋との初体験シーンは裏取りされるまで「嘘を付いている」と思ったんですけど流石にそれは無かったですね、嘘まみれになっていく秋乃の最初で最後の本当のことだったのかなとも考えましたね、最後までキスを嫌がって居ましたけどそのキスの牙城も高橋によって堕ちてしまうわけなので
高橋に関しても悪い人ではないんですよね、風俗嬢とその客と言う感じではあるものの強張っていた気持ちをうまく溶かしていく描写が丁寧ですし
「アネモネ」の客に悪い人と言うかあからさまな嫌な客が居ないのもポイントかも知れない、はじめはあれだけ卑しい仕事だと言っていたにもかかわらず様々な境遇の客との対話をしていたらそりゃ、昔の「優等生だった秋乃」って言うのも薄らぐ気持ちはよくよくわかる
よっぽど軽い言葉より高橋の方が…って思うシーンが結構有りました
それと、重圧を感じていたんだなと
十代から二十代にかけての皆が遊び呆ける時間に借金を抱え、母親を支え、という生活だった秋乃からしたら性行為で簡単にお金を稼げて自分をイメチェンすることが出来る「風俗」って言う職業にハマってしまった様子が…もうね…
自暴自棄ルート
せっかく憲秋と同居状態になり、イチャイチャしていて本当にこれは「はじめての彼女」か?と思うぐらいハッピーなのに
ただあのピンクネオン街には不穏因子は付き物であるし、秋乃の母との関係もぎくしゃくし続けている様子を見るに一筋縄ではいかない暗さを感じ
カオリと上位の客に寄る契約に関しても、アキラ及び店側は黙認した状態且つ
「資本主義だから」という肯定とも否定ともとれないコメントがまた辛い
その上、高橋のもとに愛人契約を聞きに行く姿はアーッ!ってなりましたね
彼女は風俗嬢として生きるのではなく、憲秋たちと一緒に学校の先生になるための大学生に憧れていた姿の結果が上級客との愛人契約になるためなので…
なんども秋乃の母親はまっすぐ生きていれば神様は見ているということも言っていましたが、まっすぐ生きていれば良いことが有るわけでもない
実際、やりたいことも出来ず・少しの望み(食欲)を叶えることも出来ない
そのお金を使ってゲスい愛人契約を持ちかけるおっさんがまた資本主義社会の闇を感じましたね…
後は他のルートでは無かった秋乃の母親が娘の風俗バレ、というところでしょう
風俗嬢になって、愛人契約も終わって、後は幸せになるだけだったのにまたしてもうまくいかなくなる
病院で襲われた男一家の家族を壊し、皆が光の世界で生きている中結局また風俗と言う世界に戻っていくというか
そのような生き方しかできないとも最後は告白します
その夜の世界に戻っていく姿があまりにもつれぇ…
風俗嬢同士のバイオレンスがあるのかなとも思っていたので、安心はしましたけど前半のイチャラブから後半の汚れてしまったらもう戻れないって言うのがとても辛かった
生まれ変わっても風俗嬢を続けるよ
と言う話が最後に出てくるんですが、夜の世界を通じて人間のきれいな部分や汚い部分を見ながら生きていくということもまた人生で重要って言いたかったのかな
どのルートよりも1番温度差で感性がボロボロになりましたし、実際のところ恋に焦がれて幸せだった中高生の時代には戻れないってことなんだろうなって
バイオレンスでまとめてくると思ったので、ある意味とてもやるせないお話でもありました
CG・Hシーン
まあ風俗店なのでそういうシーンだらけ
人によりますが多分NTRとかBSSとかに近いものは有ると思います
真面目で堅物な女の子が快楽に負け堕ちていく描写というかドキュメンタリーのような語り口はなかなか見ない
風俗街のネオンの明るさに対するその世界の暗さ、怪しいピンクライトに照らされた女の子の肌のテカリとか良かったです