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銀色 完全版 レビュー

総評

願いが叶うという謎の「銀の糸」が人々を巻き込むオムニバスストーリー
ただ「願いが叶う」というのは単純な話でもなく、喜ぶ人が居て悲しむ人もいる
2章以降は銀の糸に翻弄される人間の話
4章の篠崎あやめにはHappyとBad(強制レイプ)が存在しますし、「銀色」範囲だと幸せになれるのは篠崎あやめたちのみ
結果的にどういう話に昇華されるのか、4つの時代を映し出す銀の糸と一貫したテーマと謎を生み出すオムニバスストーリー
完全版で4章の続きとMissing Link扱いである「錆」のシナリオが読めます
数奇な運命を辿った先の銀の糸は最後にどういう活躍をしてくれるのかと言う意味も含めて
かなり場面転換も多い作品なのでガッと一気に読まないと話忘れちゃうって人も多そうです(多分それ防止の章丸ごと読めるようにしてるんだと思うけど)
「錆」は読んで損がない章でした
朱面白いらしいんだけど長くて眠くなるっていうのが困るんだよね

1章 逢瀬の峠

時代は平安前後ぐらい?
色街に売られた名もなき少女と人斬りの儀助との交流シナリオ
行く人行く人を斬って居た人物と外も出たことがない少女のひと夏の交流ですし、二人の生きている意味や生きていた意味を探し出すと言うストーリー
話的には行く先が見いだせない二人の逃亡なのでまあそうなるよねと言う儚い結末を迎えますがBGMのかかり方と死生観も相まって非常に良い構成だったと思います
ただまあ個人的にガッツリ泣かせるぞ!感が強くてうーん感も強かったですが、00年代初頭の泣きゲーを意識している感じが刺さり
ぽんぽん書きたいシーンを積み重ねているので胸に来ると言えばそうなのですが過程がもうちょっと描かれてほしかった部分とまあ00年代だしねぇみたいな気分なのでいろいろあると思います

2章 蹈鞴の社

名家久世の末息子である主人公の頼人は兄弟たちと揉めてほとぼりがさめるまで地方へ飛ばされてしまう
そこで滞在先の神社の巫女の狭霧と神主である一輔との一見ハートフルな交流ストーリー
1章や3章が結構短編で且つ内容も「銀の糸」がガッツリ絡んでくる反面、2章は結構狭霧の幼い頃や現状の頼人との交流が丁寧に描かれすぎて終盤「銀の糸」が絡んでくるのでそれまでは割と順当な?ギャルゲーしてるんですよね
名無しの少女とは生きた証とは違う「生きた証」を彼女も残すのですが印象としては「てのひらを、たいように」を思い出す感じ
逆に銀の糸を強く出さず村人の露悪的な部分がしっかりと描かれているのでどっちかというといくらなんでも…みたいな気分にはなりました
狭霧が純粋であるからこそ(ぽんこつって言いたくないこの子)村人の悪意も素直に受け入れ、運命を果たすみたいなストーリー構成でした
ただ丁寧な頼人との交流を描きすぎていてちょっと中だるみしていたのも問題か

3章 朝奈夕奈

個人的に淡々と読んでいた1章2章とは違ってセーブしまくりでした、もうどのシーンも刺さるんですよね
7年前両親を失い父親が経営していた定食屋佐々井亭を切り盛りする姉妹の夕奈と朝奈
家族を大事にし、父親の残した佐々井亭を非常に愛する夕奈に対し、もっと年相応な色恋をすれば良いんじゃないかと提案してしまう妹の朝奈
そこで出会った帝国軍人である志朗と夕奈をくっつけようと母親の残した銀糸がついた首飾りに願いをかけるのだが…
というバリッバリの昼ドラの三角関係みたいなシナリオなんですよね
好きな人はド直球に刺さるはず
両親の残してくれた店をあまりにも大切に思う姉と、妹の自分や家族のことばかりを思って恋愛を逃してしまうのは良くないと思う妹の気持ちのすれ違いが非常に良く書けてたと思います
「銀の糸」の願いは叶えてやるけどその方法は考えねーからな、みたいな雑な願いの叶え方からのすれ違いが見事
姉の夕奈は「ねーちん」なんて愛称で呼ばれて愛されてますが、そりゃそうなるわって感じに不憫
勿論、妹の朝奈が銀の糸に願いをかけなければこんなことにはならなかった筈なのに、朝奈が士郎に対して思いを寄せ始めなければこんなことにはならなかった筈なのにって言う
ボタンの掛け違いみたいなミスのせいの結果でしてめちゃくちゃしんどい
崩壊前と崩壊後のギャップも良いのですが、最後のシーン前に若干崩壊前に戻っているところとかを見ると報われねぇ~~~~~!って感じが非常に強くもどかしい気分になりました
シナリオの関係上含めてやっぱり愛されていたのは朝奈に思えてしまい、
それまでずーっと佐々井亭の事や妹の事を考えて、誰よりも家族や妹を守りたく生きて自身の意識すら高いねーちんが狂っていくのは辛いものも感じました
ヤンデレと言う言葉が無かった時代ですから、そりゃまあ彼女の愛の重さはLegend桂言葉と同じと言っていいでしょう
ヤンデレと一言で言われると桂言葉も環境で追い詰められて狂っていく部分が多々(というか結果だけを見ると誠のヘタレと世界の裏切りといじめ)だと思ってるのである意味単純な主人公しゅきしゅき「ヤンデレ」とは違うって感じが非常に好きです
いい子ぶるんじゃないわよ!みたいな事も言うわけですけどまあそりゃそう見えちゃうよね、って言う現実とそこまで銀糸のせいで狂ってしまった夕奈ねーちんがとても哀れ
志朗がもっと空気が読める利口な軍人だったら丸く収まっていたでしょうが、ねこねこ史上1のヘタレと言っても過言ではない…かも
…ねこねこFDでねーちん幸せに出来ませんか?

4章 「あやめ」

失語症と言うハンディキャップを抱えて生きる少女、篠崎あやめとその父親が経営するカフェでの交流話…だけではなく、ついに「銀の糸」と言うものがどうやって出来るのかを吉備大井跡とあやめの咲く湖で出会った「あやめ」と平行的に語られていく話
非常に綺麗で分かりやすく、且つ読みやすく出来ていました

人柱になった狭霧の願いが叶うはずもなく
、結局民を救うためには銀糸が必要になると言う形で」久世一族から下った名は「銀糸」を作るということ
あやめと呼ばれる少女との交流をしながら大陸から渡ってきた銀糸の作り方を語る反面、今まで人々を操り人々が思っていない形で願いを叶え続けていた銀糸と篠崎あやめの関係が深く語られていたのも良かった
子どもだったあやめが魔法のような銀糸を自慢したいのに信用してくれない母親の気持ちを理解できず、一時の感情で否定してしまい永遠の別離に繋がり、そのままあやめの言葉自体も消えてしまったというのがまた悲しすぎました
場面転換は非常に多いものの読みやすさがすごかった
ハンディキャップに甘えないで自分で言葉を取り戻さなければならないと言われ苦悩するあやめと無理をしないでありのままのあやめで良いんだと認めてくれるマスターや主人公が非常に優しい世界してました
マスターのハンディキャップに対する理解も主人公の理解も(一般人と違うと思って)
線を引かないで欲しいと言う言葉にあらわれてますがこの考え方は現代でも通じるものがあるなと思って熟読できました
結果的にあやめも朝奈も狭霧もお荷物になりたくないと言う形は違えど一貫した考えが存在するので通して読むのはスッと入ってきましたし、結ばれた後の篠崎あやめの幸せそうな顔も、白黒だったあやめと大井跡の関係もカラーになる演出?が非常に良かったです

結ばれず手に文字を書くスチルも赴き合って好きですね…

錆~さび

ハッピーエンドで終わったじゃないか!と思ったところであやめの失語症は治っていないし
結局のところ大井跡とあやめはなんでも叶える銀糸を作り出したのか?という4章のAnswerがこの章


0.5章とも言えるこずえとこずえの姉である少女がミッシングリンクとして繋がります
正直、オムニバスストーリーなので全章の登場人物が
同一人物の生まれ変わり
なのか?というのもかなり曖昧に描写された上での答えなので非常に救いのなかった名無しの少女や狭霧たちがやっと報われた、と共に夫婦となったあやめと大井跡が結局、「銀の糸」を作り出したのかと言う答えもきちんと出してくれるのでかなりスッキリします
ただ、こずえ姉妹関係はどうこうもなく救いが無いのは当然だとしても、
銀糸を作り出すには人の命が必要になる
為、4章だけだとあやめと大井跡がハッピーエンドで暮らせるというのは存在しないのですよね
じゃあどうなったかと言うと
愛しい人を守るため犠牲になる
あやめとその姿を見た大井跡が共に銀の糸の元になってまた救われねぇじゃねぇか!と思った矢先、一面に広がる菖蒲畑

一方現代編で失語症は治らないとの宣告を受け、落ち込むあやめだったものの銀糸の力で季節外れの菖蒲畑と蛍を主人公と見るシーンはやっと…やっと報われた…って気がしました
通して章全員のAfterもさらっと描かれるので狭霧や朝奈夕奈姉妹が笑顔で居たのも最高でしたし、何と言っても声が戻って喋れるようになった篠崎あやめの声がまた良い…って感じ
ここまで読まないと「銀の糸-Silver」に関してただただ理不尽に振り回される人間の運命ゲーなのでなんとしても読み切って欲しいところですね

CG・Hシーン


スチルはまあ当時のゲームだな、って感じのものが多め
初期ねこねこということもあって秋乃武彦さんメインではなく白凪マサさん主体で葵渚さん他がCGを描いてる関係上ばらつきはありますが綺麗です
正直Hシーン無くてもこのゲームは通用したんじゃないかなーって思う部分が結構
1章の逢瀬の峠の色街自体も強く押し出されたものでも無かったですし、今の時代このぐらいの性的描写がある全年齢系は普通に存在してるので頑張れば移植できたのでは?と思う次第

BGM

印象深いのは「先人はかく語りき」とか「星の花束」とかかなり名曲揃い
jubeatとポップンミュージックやってた経歴のせいで「銀色(ぎんいろ)」はひろみねーさんの歌声より達見恵版が好きです…

おまけシナリオ

”ねこねこらしい”っちゃらしいんですが緩急があるので風邪引いちゃう…
後はまあ新録の音声と旧音声の違いは目立ちましたね
そしてNscripterなのでまあはい、UIはだいぶ古い…そりゃそうなんだが…


流石に24年前のゲームなので古さは否めませんが、やはり「名作」ですね
オムニバスストーリーなのでサクッとシナリオが読めるのも魅力的です