夏ノ終熄-なつのおわり- レビュー


総評

終末世界スローライフストーリーです、ミドル帯なのでそんなに長くはありません
かずきふみ氏のシナリオですが奇跡も起きないし、魔法も、特殊な能力もない
閉塞的な環境だからこそ生み出される「命」についての物語で非常に良いですね
終りが近づいている世界だからこその
、「日常」の尊さだとか、「生きていく」重みだとかがうまく書かれている作品かと思います
ただ単純な田舎のスローライフという訳でもなく、
「食べる」ということの重みとか、ミオの気持ちの変化とかが主軸に描かれていました
三咲里奈さんの演技も最高ですし、U35(うみこ)先生のイラストも最高、「Peak a soul+」のBGMも最高と文句のつけようがない出来
特に昨今コロナ禍もありましたし食料の高騰化等、生きづらい世情だからこそ生まれる物語だろうなぁと言う気持ちにもなりました
BADの文字通り共に

終わっていく
ENDも良かったですし、TRUEの前を向いていくENDも良かった
個人的におまけルートだと思う「ネコ」派生も好きです
重々しい世界ではあるものの、ほぼ美少女とスローライフが主軸に置かれているので世界の暗さもあまりなく、エンディングはどれもカラッとしてますね
ぬちょぬちょしたドロっとした終わりが無いのですっきり読めるはず

シナリオ

自然豊かな山の中で暮らすユウジのところに突然やってきたヒロインのミオ
ゆっくり流れる時間の中でスローライフふたりぐらしが始まる
流石のかずきふみと言った印象ですね、やはりハズレがないな…

END1

ちょこちょこ描写はされるのですが"終わり"と呼ばれる

致死率がかなり高い病
がかなり流行っている終末世界
度々ミオが元いた街の話をするのですが、
パンデミックが起こり
喧嘩したり、縄張り争いをしている状況
治安が相当悪くなり、街で女の子一人暮らすのはほぼ不可能に近い別の意味でサバイバル状態が起きてる
ユウジ自体も祖父母のいるこの田舎に引っ越してきたものの結局
パンデミックから
は逃れられず
親戚一同亡くなっている
と言う背景
ミオも両親の事をあまり話したがりませんが理由としては
パンデミックで亡くなっている
から
かなりゆったりとした世界観なので騙されていたと言うかギャップが凄く、しっとりとして「終わって」いきます
ミオだけが発症している病ではないので、慎ましく暮らしていたふたりの生活が終わっていくと言うしっとりしたエンド

ふたりだけの世界で思いあったふたりが終わりを迎える
全くハッピーな形ではないですが、非常に儚く美しいエンドですね
U35先生の透明感あるイラストがよりその世界を構築していて、「Peak a soul+」(安瀬聖)がつくりだすBGMも相まっていると言いますか、とにかく美しい
このエンドが有るからこそのTRUEって感じもします

END2(克服)

体調を崩しがちなミオをユウジなりに看病して行くのがこのルートでしょうか
ユウジ自身も発症しないで終わるので形としては一番無難というかハッピーだと思います
毎日ミオが鏡を見る理由も納得です
街や村民はいないけれども二人で慎ましい生活を過ごしていこうねという前向き感が非常に好き

TRUE(生存)

生きていくために狩猟をメインにしていくエンド、というか"終わり"という病自体もタンパク質が重要なのでジビエもですし、果てはカエルまでも食します
印象としては鹿肉を食べるために狩猟をするシーン
生きていくための行為のため当然ですが命を奪うと言うことになるというのも含めて『終熄』なんだろうなと
ミオ自体も生きていくためだからと言いながらも、
食べるということは命を奪うということと割り切りながらも感情ぐちゃぐちゃと言うので「にくにく2」を思い出しましたね

簡単に諦めちゃいけないんだな、命って大事なんだ

と「食べる」ことの尊さや有り難み、「命」の大切さをミオの視点で語られるのが非常に良かったです
その次の日に

自死を選んだおじいさんの死体
を発見し、ミオとユウジで弔います
こんな世界だからこそ看取る人が居らず、世界と別れていく様子を真に受け、それを含め軽々しい言葉になってしまうところが残念ですが、「命の尊さ」について再確認するシーンも良かったです
特にユウジにしろミオにしろ親族と会えずじまいで別れてしまっているので尚更のことでしょう

二人共人生を諦めていたからこそ、そして動画に残して過去を見るのではなく
前を向いて幸せを掴み取るんだ、その為に懸命に生きるんだと言う締め
未来がわからないからこその尊さがありました、はー好き

TRUE(ネコ)

TRUEの派生ですが魚釣りをしていると川で1匹のネコと出会ってと言うストーリー
終末世界だからこそペットを飼う余裕なんて無いわけだったので、ミオとしてはこのスローライフで見つけたもう一つの幸せなんですよね
妊婦になったミオを撮るENDも有るのですがネコと新しい命を持って幸せな動画にしてる様子もすごく良くて、甲乙つけがたいなと思いました

CG・Hシーン

CGはU35先生、超綺麗です
枚数はまあロープラなんでこんなもんか…って感じ、多くはないです
Hシーンは4シーン、ミオの発情が1シーン

ミオ自身はかなり肉食系の子なのでガツンとこういう風に描写してるのも良きです
思いを伝えあった二人が延々とイチャコラする(文字通りの意味で)の非常に良いですね
朝も昼も夜も、的なシチュエーションがTRUEであるのですが終末世界、見てる人も誰もいるわけでもないので時間がある限り思いをぶつけ合うって感じなのはすごい好き

BGM

安瀬聖のピアノは最高ですし
中でも「静けさに満ちた日々」とか「人肌を乞う」とかが個人的に好きです

システム

タンパク質を撮るか取らないかでミオの調子が変わっていくのはだいぶ面白いシステムですね
1日の探索は山・川・廃墟の仲を選んでタンパク質(主に肉)を探していくシステム
初回は多分どうやってもBAD(死亡)固定、2周目から新たに狩猟出来る部分が増えるのでそこを中心に見ていくか川で魚釣りをするかがポイント



閉鎖的な世界の"アオナツライン"かもしれません、重々しい世界観ではあるものの基本的にゆるっと美少女とスローライフでサクッと読めると言う利点があるので気になった方はプレイすると良いと思います